【13.01.04】新春インタビュー 平沼 辰雄さん 自然エネルギーで作る市民発電の普及を!資源は有限、地域の中で循環

 
愛知県、名古屋の大都市でも自然エネルギーを普及しようと「おひさま自然エネルギー株式会社」を設立し、取り組んでおられる平沼さんにお話を伺いました。「消費者行動が社会を変える」とのお話には、市民としてどう行動するのか、示唆あるお話です。                       (聞き手 岩中美保子・撮影 加藤平雄) 

平沼 辰雄さん

1952年7月愛知県生まれ。おひさま自然エネルギー株式会社代表取締役。中小企業家同友会全国協議会(中同協)地球環境委員会委員長。愛知中小企業家同友会地球環境部部会長。

資源は有限、どう循環させるのか

 
2012年6月に、おひさま自然エネルギー株式会社を設立しました。

 長野県飯田の「おひさま進歩エネルギー」の活動に学び、太陽光、バイオマス、水力、地熱、風力などすべての自然エネルギーを市民参加で作る会社です。

 大手企業がモノを大量生産し、海外へ市場をもとめる時代は終わったと思います。資源は有限です。有限資源をどう使っていくのか。日本は、99.8%くらいエネルギーを輸入しています。石油も自然の限りのある資源、エネルギーだけではなく食もそうです。日本の国は、食もエネルギーも海外に頼っている。これは考えないといけないと、危機感をもっていました。

 これからは、地域のなかでどう有限の資源を循環させ、自然エネルギー、省エネルギーに取り組んでいくのかという時代だと思います。

地域循環型の自然エネルギー―大都市でも可能

 自然エネルギーを都市でどう取り組むのか。3年ほど前から中小企業同友会の経営者の方々が集まり検討してきました。 

都市にあるたくさんの建物の屋根を有効につかって発電していく。設置したいが資金がない方にも初期投資ゼロで設置ができる「おひさまゼロ円」というシステムを大いに普及していきたいと考えています。

「おひさまゼロ円システム」は個人宅に太陽光パネルを初期投資ゼロ円で設置し、9年間毎月一定額(およそ1万9千円程度)の利用料を負担していただくシステムです。
 
10年目には設置した太陽光パネルは譲渡します。発電した電気は家庭で使った残りを電力会社(中部電力)に買い取ってもらいます。省エネすれば収入も増えるので、省エネ意識が進みます。

 飯田市の事例では、毎月の実質的負担は6千円程度となっていて、太陽光パネルを設置したいけど、最初の負担が重いという方にとっては大きなメリットです。

 もう一つ、「おひさま市民発電所」ということも考えています。公共施設や工場、事業所、学校、保育園などの屋根を借りて太陽光パネルを設置し、発電した電気を固定価格買い取り制度によって20年間、電力会社に販売するシステムです。

 いずれのシステムも、設置のための事業資金は市民ファンドで集めて、出資していただいた方に利益を還元します。
 これが経済循環につながります。銀行からお金を借りて、銀行に返したのでは、お金が地域に回りません。
 飯田での経験を愛知県や名古屋でやってみよう。名古屋で展開した経験を全国で普及できれば、自然エネルギーは大きく広がると思います。

原発ゼロへ、自然エネルギーの志を育てる

 自然エネルギーをひろめたい。原発ゼロにしたい。代替えエネルギーにしたいとの意志を持った方々の資金、私は、志のお金(志金)だといっていますが、こうした志金を出資してもらう、みんなでつくる市民発電です。

 ひとりひとりの志で新しい自然エネルギーを普及していく、それは、原発ゼロへの意識にもつながっていくと思うのです。お金を集めて、事業をやるのではなくて、志も一緒に育てようということが一つの大きな目的です。

再生可能社会――崩壊しない社会を

 中小企業は絶対的に多数です。中小企業と地域の経済が潤う施策が必要です。中小企業憲章が制定されました。我々が行政とタイアップしてどうすすめていくのか、住みたくなる地域をどう作っていくのか。地域ごとにすすめていけば、日本全体がよくなるではないかと思います。

 資源は有限です。崩壊しない社会をどうつくるのか、まさに、再生可能な社会です。地域のなかで人と人との関わりを大事にする文化を熟成していくことが大事です。
 グローバルスタンダードからの脱却が必要です。そうした価値観をどう転換していくのか。
 人間の幸福度はモノがたくさんあることではないのです。住みやすい地域で一緒に生きる。こういう地域をどう作っていくのか。その中にエネルギーもあり食もあり、全てあると思います。
 私たちのすすめている事業がこれからの社会のあり方のさきがけになるような取り組みとして、貢献したいですね。

消費行動がすべてを変える

 いままでの生活スタイルの転換が企業も家庭も街も必要だと思います。 ほんのりと明るくて家族団らんの食卓っていいですよね。
 大量消費ではない社会をどうつくるのか。消費者が変われば、社会は変わっていくと思います。 売れないモノは、企業はつくりません。消費行動がすべてを変える、賢い市民になることだと思います。国内でエネルギー自給と食料自給率をあげること。ここに、これからのわれわれが目指すべき姿があると思います。そういう社会は幸福だと思いますね。
 原発は、いらない、つくってもしようがないと金の亡者たちに思わせることをやらないとだめだと思います。(笑い)

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