【21.01.10】フンク・カトリンさん(環境活動家)―グローバルな視点を持ち、ローカルな行動を―

7年間で私たちにできること

 
フンク・カトリンさん

ドイツ・ベルリン出身。
名古屋市在住。
環境活動家。
Friday For Future 名古屋(FFF名古屋)の立ち上げメンバー。

臨界点まで7年半

 産業革命以降、CO2排出量に比例して地球の気温があがり、温暖化が進んでいます。現在1・1度まであがっています。環境破壊・異常気象が一気に進む臨界点は1・5度と言われていて、このままいくとわずか7年半で2度に達してしまいます。1・5度から2度の間に気温上昇を抑えなければいけません。非常に危機的状況にあると言えます。
 すでに気候変動の異常事態が現れています。バッタの大発生、マラリア・感染症の拡大、乾燥と気温上昇による大規模森林火災。カリフォルニア州では東京都の何倍もの面積で火災が起きています。また、現在グリーンランドでは1日800億トンの氷が溶けて海に流れています。マイアミではすでに上がってきた海水をポンプで海に戻すということをしなければならなくなっています。海に沈んでしまう島・地域が出てくれば難民も生まれてしまいます。

日本は気候変動の影響を最も受ける国

 気候変動を受ける国のランキングがあります。200カ国中、第1位はフィリピン、日本は第2位です。海に囲まれた島国であり、異常気象の被害を受けやすいからです。台風や豪雨は海面の気温上昇によりここ数年、数も増え、規模も大きくなっています。熱波により亡くなる人も増えています。
 気候変動は日本にとって死活問題なのに、海外と比べてもメディアで取り上げられることが少なく、多くの市民は知らされていないと感じます。

SDGsの実現を阻む4つの障害

 SDGsを達成するためには主に4つの障害があります。 
 1つは化石燃料を使いすぎることです。化石燃料とは何万年とかけて地下深くにあったもの。これが数百年ですべて大気中に排出されることになる。過剰消費です。 
 2つは、自然に戻らない、不自然な物質をつくりすぎること。プラスチックのリサイクル率は世界中でもわずか18%と言われています。リサイクルの回数も8~10回程度です。分解できないマイクロプラズマによる海洋汚染も深刻です。

不可逆的な自然破壊

 3つは、不可逆的な自然破壊。私はヴィーガン(肉・乳製品を取らない)になって1年半くらいです。いま、世界の哺乳類の割合は人間36%、野生動物4%、畜産60%です。畜産によって出されるCO2排出量は世界中のすべての交通機関を合わせた量と同じです。特に牛はこの排出量が多く、人間の30倍の餌が必要とあってそのための森林伐採が深刻な状況となっています。アマゾンの森林伐採の9割が畜産によるものです。この異常な状況を変えたいとヴィーガンやベジタリアンに切り替える人が増えています。
 農地開拓のために森林伐採が行われています。持続可能な農業へと転換していくことが必要です。

不平等をなくす

 4つは、社会における不平等をなくすことです。いま、全世界の50%の富を世界人口の1%の人が独占しています。人間にとって最小限のニーズ、衣食住、権利、労働などがすべての人に満たされていません。インドなど経済的発展を遂げている国がありますが、アメリカのような発展の仕方ではさらに地球環境を壊してしまいます。地球環境に負担をかけずに、人間の最小限のニーズを満たすことが必要です。
 2015年に国連サミットで定めた持続可能な開発目標=SDGsは17目標を2030年までに達成するとしています。「地球上誰も取り残さない」をモットーにしており、気候変動だけでなく、飢餓やジェンダー、教育、労働などもあり相互に関連しています。

環境・社会・経済のバランス

 SDGsの実現は社会問題、環境問題、経済問題のバランスが重要と言われています。環境・社会・経済の三つが同じ比重を保つことで持続可能な社会が実現すると考えられてきました。でも、本来、環境が守られた上で人間社会が成り立つ、その上で経済も成り立つ。資源がないと商品も作れないですし、商品を作れないと経済も回りません。地球環境が守られなければ、きれいな空気、水、森林がなければ、社会すら成り立たないのです。

一人一人の行動が重要

 個人と、企業と、政府の3つが一緒に同じ方向にすすんでいくことが大事です。日本政府は2050年まで脱炭素実質ゼロを打ち出しました。来年、再生可能エネルギー政策転換を言っていますが、どう変えるか注目しています。原発はクリーンエネルギーの一つと数えられています。確かにフランスでは地震もなく気象災害も少なく、技術も進んでいます。しかし、日本はそうではありません。風力、水力、地熱など高いポテンシャルを持った自然エネルギーへ切り替えるほうがいいと思います。 
 企業に対しては消費者として、政府に対しては「投票」という形で私たちが望んでいるものを示すことが必要です。若者の投票率の低さはドイツでも問題になっていますが、自分たちが何を求めているのか行動で示すことが重要です。
 「私一人がやっても意味がない。変わらない」という考えが一番の障害です。「一人が百歩でなく、みんなが一歩」。小さいことからの積み重ねが大事です。

いま、やれることは全部やりたい

 私も、気候変動については学校で勉強しましたが、だれかがやってくれることと思っていました。フィリピンに留学した時にできた友達や家族が、2013年のフィリピンを襲った台風の被害にあいました。その友達がエコストアを始めたことをきっかけに、色々教えてもらい、自分の生活を変えたいと強く思うようになりました。 
 将来、自分の子どもに「地球がなんとかなるうちになにもしなかったの」と聞かれてなんと答えるか。健康で、お金も困っていない、権利もある、安全な国に住んで、自由な時間も多い、私には力がある。ネットで調べて学生・若者を中心にしたフライデー・フォー・フューチャー(FFF)を立ち上げました。昨年11月には名古屋で300人を集めてマーチをしました。
 しかし、会社の仕事とプライベートの活動の両立は大変で「本当に7年間しかないなら自分のやれることを全部やりたい」と環境活動家になる決意をしました。 
今は、会社が立ち上げたサスティナビリティ推進部に配属されて、仕事と活動が一致してやれるようになっています。

「自分」と「未来」は変えられる

 「過去」と「他人」は変えられません。でも「自分」と「未来」は変えられます。まず自分が変わり、他人をインスパイアすることが私の役割と思っています。SDGsのワークショップなどでも、環境にも健康にもお財布にも優しい。「意外と楽しい、続けられそう」と思ってもらうことを大事にしています。
 Think Globally,Act Locally(グローバルな視点を持ち、ローカルな行動を)が私のモットーです。世界中一人一人が自分なりにできることを考え、行動すれば、必ず変わっていきます。

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