【07.08.05】伝えることに臆病になっていないかと(文化のすすめ)

久保田 明 (劇団名古屋 演出家)

 
5月、プロレタリア作家葉山嘉樹と現代の労働者の過労死をダブらせ描く『セメント樽の中の手紙2007』を演出した。劇団名古屋創立50周年記念の舞台だった。作者吉村登はプログラムに「名古屋駅前・・・・・トヨタ高層ビルを見あげ・・・・これだけのビルには、どれほどの人の生き血が・・・・・」との思いが筆を執らせたと書く。

 空前の利潤を誇る巨大企業と、その下請け企業に働く非正規労働者のおかれた状況。が、労働者という言葉すら馴染まなくなった現代、流行らない作品を手がける事になるとの躊躇が私にあった。が、830余名の観客も、演じた若い劇団員も、舞台の人物に共感するところ、多かったのである。

 今、8月10日から12日まで、反核舞台人の集いの演劇公演『忘れてはいけない』の二部で上演する『戦争を知らない子供達の子供達』を、九人の若者と稽古する。日本の戦争と憲法九条を考える台本を受け止める気概が彼らにはある。
 私が臆病になってはいけない。

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