【07.10.10】映画「シッコ」を観て

植村 好清さん(オール名鉄革新懇話会)

 上村好清さん
「華氏911」で笑いと恐怖を教えてくれたマイケル・ムーア監督が二年間の沈黙を破り完成させた最新作。

 アメリカの健康保険充実度は世界37位、先進国中最下位。公的な国民皆保険制度がなく、民間医療保険で国民の60%、高齢者や貧困者などには公的医療保険(国民の25%が加入)、残りの4千7百万人、約15%の人が無保険者、毎年1万8千人が治療を受けられずに死んでいる。アメリカの医療の現実、しかも保険に入っている人々の映画。
 
 アメリカの医療保険の大半は、民間の保険会社が医師に給料を支払って管理するシステム。治療は不必要と診断した医者には奨励金を与え、加入者には、理由をつけて保険金を払わない。そのために起こる悲劇の数々。 アメリカ国内では医者にかかれなくなった人が、船でキューバに渡り丁重な治療を無料で受ける場面や、イギリス、フランス、カナダなど自己負担なしで医療を受けられる国があることも紹介されている。

 08年に米大統領選がおこなわれる。民主党有力候補であるヒラリー・クリントン上院議員は国民皆保険を提案している。クリントン政権時代に自らが手がけた法案が廃案となった経緯があり再チャレンジを目指しているが、その実現は容易でない。映画『シッコ』は日本の国民皆保険制度の大切さを教えてくれている。

同時に、度重なる医療改悪で、ひょっとすると日本もアメリカと同じ道を歩もうとしているのではないかと大きな不安も浮かんでくる。必見の映画。

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