【08.01.10】文化のすすめ(21) 「藤沢周平ブーム」

谷邊 康弘 (時代小説研究者)

数年前から藤沢周平ブームが起きている。ブームの火付け役の一つになったのが、山田洋次監督の藤沢周平原作三作品である。

02年の「たそがれ清兵衛」、04年の「隠し剣鬼の爪」、06年の「武士の一分」と続いた。さすが山田洋次監督。舞台は江戸時代ながら現代日本に通じる風刺劇、人間ドラマに仕上がっている。
 藤沢作品がブームになるのは、改めての映画化によるだけではない。何よりも作品そのものの魅力とパワーにあることは言うまでもない。ある藤沢周平フアンの計算によると、藤沢作品の文庫本総発行数は2300万部を超えているそうだから、いかに人々に愛されているか分かる。
藤沢周平は権力におもねることと、国が戦争に手を染めることを徹底して嫌がった作家であった。ブームの背景には、人々の現代日本への危機感があるとおもうがどうだろうか。特に、再び「戦争をする国」になるのではないか、という危機感が・・・。

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