【18.11.10】前川喜平さん(前文部科学省事務次官)――日本の政治の危機に声をあげていこう!

戦争法許せない!と国会前に

 
前川 喜平 さん

現代教育行政研究会代表。1955年生まれ。東京大学法学部卒業。2016年文部科学事務次官に就任。17年退官。近著に「面従腹背」「官を語る」など

 10月30日、革新・愛知の会は「講演と文化の夕べ」を開催し文部科学省元事務次官の前川喜平さんが「国家権力の私物化!見過ごせなかった私の信条―モリカケ・教育・憲法」と題して講演しました。地下楽屋もいっぱいになる1300人余が参加しました。前川喜平さんのお話(要旨)をご紹介します。
(編集 革新・愛知の会事務室)

記者会見は私から求めたものではない

たくさんの方においでいただいてありがとうございます。
 私の場合は、政治家でも芸能人でもありませんのでファンはいらないのですが(笑)。私はヒーローでもアイドルでもないわけです。

 最初に私に文科省の内部文書をもってきて「見たことがありますか」とアプローチしたのはNHKです。「見たことはありますよ」、あったことをあったという話だけです。そこから始まっています。取材はいちばんNHKが早かったのですが、報道したのが一番遅かったのもNHKです。現場で取材をしたNHKの記者の方の意地で初めて夜に少し報道しました。それを見つけたのが、朝日新聞です。記者会見は、自分から進んでやったわけではありません。それ以後、自宅は報道陣に包囲されまして、ビジネスホテル暮らしに。望月衣塑子記者(東京新聞)から「前川さんが記者会見をやってくれるなら包囲を解く」と言われました。だから、記者会見をすることになりました。ある人から防刃シャツを着たらと言われて念のために着けました。
 『文芸春秋』にインタビューをうけ、2017年7月号の記事が「独占手記」・「わが告発は役人の矜持」と私自身が書いたようになって発売されました。私は書いていないのに、「こういうものなのです」と言われてやだなあと思いました。これが大きな影響を与え広く顏を覚えられることになりました。時々声をかけられます。女性から「佐川さん」(笑)声をかけられたことがあります。好意的でいやな気はしません。佐川さん、柳瀬さんも気の毒ですねえ。顔と名前を憶えられて「ウソついたろう」と言われて。その点、私は幸せな第二の人生を歩んでいます。

モリ・カケ問題に共通するもの

 森友学園、加計学園、官邸が自分のしたいことのために行政をゆがめたものです。いずれも国家権力の私物化で、学校の認可設置を規制緩和という形をとって特定のものに特権を与えている、国民の財産がゆがんで使われている――この点で共通しています。
 政府の規制緩和の流れにのって、本来学校は自前のお金でなければならないというのが大前提にもかかわらず、「借金で小学校をつくってもいいですよ」ということです。こうした規制緩和の流れのなかで設置申請をしたのは森友学園しかありませんでした。
  これをやったのは橋下知事から始まり、規制緩和の名前で特権を与えています。
 認可する者もされる者も日本会議に連なっています。
 もう一つの共通点は国と地方が連携して一つの結果になるように持っていっている。佐川さんの判断だけではできません。司令塔がなければできない。ここが解明されていません。私は総理官邸しかできないと思っています。官邸・今井孝也総理首席秘書官がからんでいることは間違いないと思います。影の総理と言われています。今井主席秘書官は総裁選挙でも安倍総理にくっついている。 佐川理財局長の証人喚問で自由党の森ゆう子議員が佐川局長と今井秘書官とのかかわりを執拗に聞いています。このやり取りを聞き、私は今井秘書官は、ゆゆしきこと、あってはならないことをやっていると確信しました。
 人の命が絶たれるという事態まで起きています。解明されないといけません。

加計・獣医学部認可と安倍首相とのかかわりは明確

 加計学園認可にあたって安倍首相がかかわったという全容は明らかとなっりました。文科省内にある文書(総理のご意向)、愛媛県の公表した文書によって何があったのかはっきりわかりました。

 (1)不公正――公正な審査をやっていない。それは、アベノミクス・成長戦略のための国家戦略特区において国際競争力を高めるということで獣医学部の新設が認められ、閣議決定となりました(2015年6月30日)。加計学園獣医学部づくりの審査はされていません。
 戦略特区ワーキンググループの八田辰夫氏は「審査にあたって一点の曇りもない」と言っているが、何も審査をしていません。そして、議長は安倍総理。

 (2)不公平――新設に名乗りを上げた京都産業大学は不当に差別されています。文科省にも呼ばれていません。京都産業大学は京大・山中教授のIPS細胞研究所、世界で最先端との協力もめざしていたのです。闇から闇に葬り去られました。

 (3)不透明――2018年4月5日に公表された愛媛県の文書(2015年2月25日)、加計孝太郎と安倍首相の会見(15分)が動かぬ証拠となっています。このため加計学園は困り事務局長が「ふとウソを思いついた」としています。
 安倍氏がウソをついていないという理由に官邸は「入官記録は破棄した」といい、新聞の首相動静欄にも載っていないと反論したことにしています。しかし、動静欄に載らなくても官邸に裏口から入ることはできます。私も何度も入りました。さらに加計孝太郎理事長の2度目の記者会見については、愛媛県の文書も読んでいないと言っています。まったく反論になっていません。
 安倍晋三はウソつきだといっても名誉棄損にあたりません。

 特に言いたいのは、伊藤詩織さんの事件です。安倍総理と最も親しいTBSワシントン支局長山口敬之氏は、逮捕も起訴もされずに今に至っています。
 ジャーナリスト伊藤詩織さんは山口氏を性的暴行で訴えたのですが、逮捕礼状が出され、逮捕の直前に警視庁刑事部長から停止命令が出てその後逮捕も、起訴もされない。この中村格部長はかつて菅官房長官の秘書をやっていて将来の警察長官候補。いまや人の自由を拘束する権限をもった警察官僚が官僚の人事権を握っている――非常に危険なこと、官邸の支配、安倍さんに媚を売っています。
 

戦争法を許してはならない 国会前にかけつける

次官になる前の15年9月18日夜、私は夜陰に紛れて国会前に駆けつけ、SEALDSのラップリズムで「集団的自衛権はいらない」を叫びました。内なる良心に忠実にならざるをえなかった。私にできることは一国民としてデモに行くことで、これは官邸に見つからずに次官に任命されました。
 今回任命された今の文科省次官は官邸の働きかけでなった人で、なるはずのない人物。文科省の局長をやっていない文部科学審議官、官邸の内閣官房にいた人物だ。行政、立法、司法も官邸の支配が徹底している。三権分立、本来国から独立していなければならないメディア、教育も危ない。

メディア・教育も危機に

 特にNHKがひどい。報道局長に睨まれた記者がNHKを辞めて大阪日日新聞で森友問題を取材している。
 教育の分野では名古屋に私を呼んでくれた前八王子中学校校長の上井靖さん(上井さんマイクを持って登場)。
 自民党の文教族の介入、愛知選出の池田義孝さんというかたですね。もう一人は兵庫の赤池さん。メディアで問題になった時、上井さんは生徒たちを前にして、取材を受けたら「思ったことを正々堂々と言えばいい」と言われ、テレビに映った生徒はニコニコとして話していました。
 日本はいま、ファシズムに入っている。
 アメリカのホロコースト記念館に次のことばが掲げられている。ファシズムの初期傾向は、強力な国家主義、軍隊の最優先、犯罪取り締まりと刑罰への執着、マスメディアの統制、縁故主義と汚職の蔓延、スケープゴート・・・こういうことを見過ごさず、一つひとつ潰していかなければならなりません。「またか、うんざりだ」といって、流されてはいけません。

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